厄病神ケンシロウ |
トキの人生最大の不幸は、ケンシロウと義兄弟になった事だろう。
ケンシロウはトキの運を吸い取るかのごとく、
随分トキのお世話になっている、
まずまっ先に思いつくのが、あの忌わしきシェルター事件。
ケンシロウはトキの被爆と引き換えに、あの強靱な体を維持している。
次に滝に打たれての修行時、トキは身を呈して流木からケンシロウを救った。
そのお陰でトキの背中には大きな一生傷が残る事になる。
幼い時にリュウケンによって崖から落とされた時も助けられているが、
ここでは珍しくトキは無傷である。
ケンシロウは哀しみによってパワーアップしていくが、
その哀しみの半分はトキ関係ではないだろうか。
ケンシロウ!今があるのも全てトキのお陰だ!感謝しろよ!
|
もしも… |
では、もしその厄病神ケンシロウが存在しなければ、
トキの人生はどのように変わっていただろうか。
とりあえず上記の不幸に見舞われる事は全くないのだから、
被爆もしないし背中もキレイなままだ。
もちろん被爆しないのだから伝承者になるのはトキだろう。
伝承者がトキに決まれば、ジャギも文句はない。
よって怒りにまかせてシンをそそのかす事はないので
ユリアもさらわれないし、シンだって乱世を生き残れたかもしれない。
サウザーの体の謎もトキは知っているので、初戦で
「ひとーつ、ふたーつ、みぃーっつ、ちにゃ!」となるだろう。
なのでシュウもシバも死なない。
ラオウはどちらにせよ世紀末覇者を目指すだろうが、
健康体トキなら十分太刀打ちできるだろう。
ラオウを倒した後はユリアと共に(ケンシロウがいなければ
たぶんユリアはトキを選ぶ)生涯医療に身を捧げる、
そんな理想ライフを送れたのではないだろうか。
|
問題のアミバ戦 |
さて、そんなこんなでトキの人生を大きく狂わせたケンシロウだが、
トキはそんな事全くおくびにも出さない。
人間が出来ているのは勿論の事、たぶんトキは彼お得意のいつものアレ、
何事もすべて宿命として受け止めていたのだろう。
そんなできた義兄なのにアミバ戦でのケンシロウの態度はどういう事か。
一応疑いを持ってアミバの元へ向かったケンシロウ。
だが奇跡の村に到着し、トキのコスプレをしただけの全然似てないあの男に対し
「なぜ…なぜ変わったトキ…」と、ひと目で信じる始末!
そんなアホなケンシロウに、アミバはいろいろとヒントを与えてくれている。
まず背中のキズ。一見して即席物だと分かりそうなものだ。
そして何より弱い!真似ているのは姿だけで、強さは到底トキの比ではない。
なおかつ女を盾にとるトキにあらざる卑怯な闘いも披露してくれた。
ケンシロウよ!どうしてこのアミバの無言のメッセージに気付かない?!
…その後は皆さん知っての通り、レイのお陰でようやく真実を知る訳だが、
その時のケンシロウの心底驚いている表情は、ますます読者を唖然とさせる。
そして煥発入れずケンシロウのゲンキンさが炸裂!
「もし本当のトキがおれを突いたのなら
いかにおれでも秘孔を破ることはできん!!」
おいおいおいおい!今さら何言ってんのよあんた!!
真実を知ったケンシロウはアミバの自滅も相まって勝利を得る訳だが、
ここでも信じられない行動に出ている。
アミバは死の直前、親切にもトキの居場所を知っている事を漏らすのだが、
ケンシロウは何も聞かずにアミバを見殺しにするのだ!
いつものケンシロウならば、「言ったら助けてやる」などの甘い言葉と
脅迫で、敵から情報を得ているのだが、(もちろん約束は守らない)
この時はトキを救いたい気持ちより、アミバを殺したい気持ちが
優先したのだろう。もちろんそれは自分がコケにされたからだ。
マミヤさんがトキの居場所を突き止めたからいいものの、
このケンシロウの思慮の無さには呆れるばかりである。
|
水影心 |
とまあ、レイ、マミヤのファインプレーでトキ救出に成功したケンシロウ。
ラオウが最も恐れていた「柔の拳」を伝授してくれるかと思いきや、
その後のラオウ戦でトキが身を呈して教えてくれたものは
北斗神拳の崇高さ、そして戦いの非情さだった。
そして、続くサウザー戦でケンシロウは自力で勝利を得てしまい、
トキから「もはやわたしが手をかす男ではない」と評される。
ケンシロウからしたらアテがはずれたようなものだ。
彼からしてみれば「崇高さ」「非情さ」といった観念的なものではなく、
「柔の拳」という最も実戦力になるものを教えてほしかったのだから。
トキの方からすると、彼は己の天分により柔の拳を身につけているものの、
本当に修得したかったのはラオウのような剛の拳だったので
言わば不本意とも言える自分の拳法をケンシロウに伝えるのは、
どこか気が引けるところがあったのかもしれない。
そうこうしているうちに、なんとトキはラオウと戦うと言い出した。
ケンシロウはさぞ驚いた事だろう。その戦いでトキが死んでしまえば、
もう柔の拳を教えてもらう事はできないのだから。
それでなくともトキはもう余命いくばくもない。
そこでケンシロウは思い立った。「止めるフリして水影心!」
この作戦は成功し、トキの柔の拳を「ほおう!」とラーニング。
見事柔の拳を身に付け、結果無想転生を体得できたのだった。
|